ヤンデレなら、病んで下さい!
「ともかくも、カメラはダメよ!今は犬猫の様子見るためにカメラをつけている家もあるけど、逆説、あんた犬猫扱いされるのよ!犬猫ーー生後三ヶ月の猫みたいに可愛らしい存在だけど!」
「彼に限って、それはないと思うけど」
心配なだけ。どんくさい性格なため、よくトラブルに巻き込まれる点を考えれば、彼の庇護欲が高くなるのも頷けてしまう。
私が、しっかりしないといけないのに。
「私が、彼に甘えすぎているんだと思う……」
何があっても大丈夫。守ってくれる人がいるから。そんな公式が成り立った今、私に成長というものはない。
『雛は、悪くない』
そんな彼の口癖。口癖になってしまうほど、私は彼に守れてきた。
初めて出会った時から。
上手く切り返せなかった私が悪い。ナンパなら断る、道を聞かれただけならスムーズに教える。そんなことすらも、あたふたしてしまい出来ずにいる私はーー本当に『悪くない』と言えるのか。
「紅葉ちゃん、私。彼に嫌われちゃわないかな」
「雛……」
「カメラ置きたがるほど、それだけ私が彼に心配かけてるってことでしょ?そんなものがなくても大丈夫ですって言いたいけど、もし何かあったら、『ほら、だから言ったじゃないか』って、飽きられちゃうんじゃないかな……。彼にあんまり心配かけさせたくないのに、私、今日も紅葉ちゃんいなかったらーー」
つい先ほどの話。大学内で声をかけられ、あたふたしていたところを紅葉ちゃんに助けられた。
頭ではきちんと断れと分かっているのに、口に出せない。喉元まで出かかっているのに、怖いのと相手が傷つきやしないかと要らない気遣いまで持ってしまう。
だから、相手もその気になってしまうんだ。『流されやすい女』と見られてしまう。
視界がぼやけそうになれば、紅葉ちゃんがハンカチを渡してきた。