俺様編集長サマにLOVE NONSTOP!


昼前には会社に戻れたわたしに、弥生が真っ先に声をかけてきた。

「どうだった?編集長との出張は」

隠しているつもりだろうけど、わたしには分かる。

弥生の口元は少し緩んでいて、ニヤけそうになるのを堪えている様だった。

編集長との出張を興味本位で聞こうとしていることくらい、わたしにはお見通しなんだから。

「とっても楽しかったよ。お土産も置いてるでしょ?あれ、編集長が全部買ってくれたんだから」

ついでに、個人的なお土産も貰ったけど、それは恥ずかしいから言わない。

すると、弥生には期待外れな返答だったのか、「あ、そう」と気のない返事をして、さっさと戻って行ったのだった。

「ったく、何よあれ。そんなに編集長の悪口が聞きたいわけ?」

肝心の編集長は、須賀さんとの打ち合わせで会議室に篭っているし、興味ある新人ちゃんは他部署での挨拶回りでいないし、会社に戻ってきたはいいけど、時間を持て余してしまった。

「ちょっと気分転換」

こういう時は、給湯室でコーヒーでも飲もう。

夢のような編集長との時間の後は、リアルしか待っていないことに、思わずため息が出てしまった。
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