俺様編集長サマにLOVE NONSTOP!
片付けが終わり、そろそろ帰社する時間になった。
編集長は腕時計を確認すると、早川さんに声をかけている。
「アポがあるんだよな?時間大丈夫か?」
「え!?アポ?」
つい声に出してしまい、慌てて手で口を覆う。
だって、まだ新人の早川さんがアポだなんて、驚かないわけがない。
すると、編集長は呆れたような顔をわたしに向け、早川さんはクスッと笑った。
「実は、兄の七光りで。このビルに入ってる旅行代理店さんと、会う予定なんですよ」
「へぇ。お兄さんて、旅行関係にお勤めなの?」
と、興味を持ったのは絵美さんだ。
「違うんです。ただ、兄の勤め先もここなもので。この一つ下の階にある電機メーカーなんですよ」
「電機メーカー?」
これには絵美さんと言葉が被る。
そういえば、いつかエレベーターで出会ったイケメンさんも、下の階で降りていったっけ。
早川さんのお兄さんは、あの人と知り合いかもしれないんだ。
なんて、世界は狭いんだろう。
そんなことを思っていると、絵美さんが真剣な眼差しで、早川さんを見て言ったのだった。
「ねえ、お兄さんの名前なんていうの?」
「兄ですか?修司です。早川修司」
ん…?
修司って、どこかで聞いた名前の様な…。
「やっぱり!ほら、香乃子ちゃんがエレベーターで会ったイケメンくん、早川さんのお兄さんだったのよ」
「え!?えー!!」