センセイの好きなもの
このまま、もう少し長く生きられるかも知れない。そう思い始めていた矢先、まだ梅雨が残る7月初旬のことだった。
母が自宅で倒れた。
『2〜3日がヤマでしょう。覚悟してください』
主治医の言葉がいつまでも頭の中で渦巻いた。
母が戻ってきても、俺は特別なことはしてやれなかった。
それどころか母は力を振り絞って俺たちに食事を用意してくれたり、細々と身の回りの世話をしてくれた。家族で出かけたのは数えるほどだった。
「母さんが家に戻ってきて少し経った頃、みんなで温泉に行ったんだ。癌に効くっていうところがあって。あとは映画とショッピングくらいかな…。もっと色んなところに連れて行きたかったんだけどな。入退院ばっかりで…」
ツムがそっとタオルを渡してくれる。泣くはずじゃなかったのに。母さんのこととなると今でもこんなに泣けるんだな。
「お母様は幸せだったはずですよ」
母が自宅で倒れた。
『2〜3日がヤマでしょう。覚悟してください』
主治医の言葉がいつまでも頭の中で渦巻いた。
母が戻ってきても、俺は特別なことはしてやれなかった。
それどころか母は力を振り絞って俺たちに食事を用意してくれたり、細々と身の回りの世話をしてくれた。家族で出かけたのは数えるほどだった。
「母さんが家に戻ってきて少し経った頃、みんなで温泉に行ったんだ。癌に効くっていうところがあって。あとは映画とショッピングくらいかな…。もっと色んなところに連れて行きたかったんだけどな。入退院ばっかりで…」
ツムがそっとタオルを渡してくれる。泣くはずじゃなかったのに。母さんのこととなると今でもこんなに泣けるんだな。
「お母様は幸せだったはずですよ」