センセイの好きなもの
次から次へと出てくる涙を拭っていると、ツムが俺の真横へやってきて手を強く握ってくれた。
母は2〜3日がヤマと言われながらも、それから5日も長く生きた。
7月15日。
余命3ヶ月と言われてから半年。母は静かに息を引き取った。
親父と俺が見守る中で、眠るように安らかに旅立って行った。亡くなる前の最後の会話を今も憶えている。
母は朦朧とする意識と戦いながら、必死に生きようとしていた。
『今日は巧の誕生日なんだぞ。成人だ』
親父は母の手を握りながら、にこやかに話しかける。
『もう…成人…なのね。巧、おめでとう。しっかり…生きるのよ。私、巧の誕生日に死ぬわけにいかないわね。おめでたい日が…悲しい日に…なってしまう…』
『そうだよ。まだまだ母さんには生きてもらわないと。誕生日ケーキ焼いてよ。苺がいっぱい乗ってるやつがいいな』
俺のむちゃくちゃな注文に母は力なく笑った。
本当はみんな分かっている。もう時間がないって。だけどまだもう少し生きていてほしい。
母は2〜3日がヤマと言われながらも、それから5日も長く生きた。
7月15日。
余命3ヶ月と言われてから半年。母は静かに息を引き取った。
親父と俺が見守る中で、眠るように安らかに旅立って行った。亡くなる前の最後の会話を今も憶えている。
母は朦朧とする意識と戦いながら、必死に生きようとしていた。
『今日は巧の誕生日なんだぞ。成人だ』
親父は母の手を握りながら、にこやかに話しかける。
『もう…成人…なのね。巧、おめでとう。しっかり…生きるのよ。私、巧の誕生日に死ぬわけにいかないわね。おめでたい日が…悲しい日に…なってしまう…』
『そうだよ。まだまだ母さんには生きてもらわないと。誕生日ケーキ焼いてよ。苺がいっぱい乗ってるやつがいいな』
俺のむちゃくちゃな注文に母は力なく笑った。
本当はみんな分かっている。もう時間がないって。だけどまだもう少し生きていてほしい。