センセイの好きなもの
「でも不仲の両親を見て育つよりは良さそうですけどね。お母さんがちゃんと育てていくかが問題ですよ」



私は母親がいないから分かる。親のいない寂しさも、親がいない方が良い場合があることも、親に捨てられたときの感情も。


「まぁツムちゃんの言うことも一理あるね」


吉川先生が作成した幾つかの書類を郵送するため、封筒に入れながら宛名シールを貼っていく。


「おーい!ツム!」


応接室から巧先生の声がして顔を上げる。
先生は声が大きいので、お茶を飲んでいた吉川先生はビックリしてむせていた。
隣の資料室まで聞こえそうな大声だ。


「今行きます」


書類をひとまとめにしてから、応接室のドアをノックして中に入る。

テーブルの上には所狭しとミニカーが並べられていた。この子が持ってきたものらしい。
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