センセイの好きなもの
「ふざけるな!それでも父親ですか?親としての自覚が全く無い!」
思わず声を荒らげてしまった。
この男―――高村さんのご主人はとんでもないことを言い出した。
「正直に言ったまでですよ。事実ですから」
今までロクに家にも帰らず、夫婦間での話し合いもほとんどしないまま一方的に離婚届を突きつけて、家にもほぼ帰らない。
生活費もまともに入れず、マンションのローンも無視。
それなのに急に話がしたいなんて言うから何かあるとは思っていたけど…。
こんな男がまた親になるなんて冗談じゃない。
「不貞行為どころじゃないですよ。相手の女性にも慰謝料を請求させていただきますからね。煌成くんへの養育費はあなたの義務です。この先会うことがなくても子どもは大きくなっていく。教育費もかかる。それを陽子さんが一人で育てて行くんですから、成人するまでは何があろうともきちんと払ってください」
この男は不満そうにため息をつく。自分が新たな生活を選ぶんだ。それならせめて払うモンはちゃんとするべきだろう。