センセイの好きなもの

｢いらない子どものために払うんですか？｣



…いらない子ども？
何を言ってるんだ。


俺がキレるより先に陽子さんがご主人の頬をビンタした。
バチンという乾いた音が響いて、頬はたちまち赤くなった。


｢いてーな！何するんだよ！｣


ご主人はテーブルを叩きつける。


｢いい加減にしなさいよ！いらない子ども？あんたの子でしょ！女作って出て行って生活費も入れない。挙句に女に子どもが出来た？ふざけるな！あんたはまた同じことを繰り返すに決まってる。こんなバカな男と一緒になるんじゃなかった｣


陽子さんは大声でそう言うと、怒りで全身が震えていた。

子どもって何のために作るんだろうな。俺が口出しすることじゃないし、人はみんな子孫を残して生きている。だから俺もここにいる。ツムだってそうだ。


｢高村さん、法廷でも負けますよ。不貞行為だけならともかく奥さまがいる身で子どもまで作られたとなると…｣


｢お前、弁護士だろ。何とかするのが仕事じゃねーのかよ｣