センセイの好きなもの
コイツ、紗絵に向かってよくそんなこと言えるな…。紗絵の顔は見る見るキツくなる。イライラしてるのは俺だけじゃないらしい。



「お言葉ですが、クライアントを守るのだけが弁護士ではありません。時には適切な方法をご提案させていただくものです。
お相手の方と一緒になって生まれてくるお子さんを大事にしたいのなら、私生児にしたくないのなら、ここは奥さまのご要望を受け入れて離婚したほうがずっと早く決着がつきますし、賢明かと。まあ、そのあとはお相手の方の訴訟ですったもんだでしょうけど―――」



「新しい生活を始めるための資金だと思われてはいかがですか?
玉井先生は腕のいい弁護士です。だからこそ賢明な案だと思いますが…。そうですね、慰謝料は500万、当面の生活費として200万、養育費は月々5万。成人するまでです。それなりに年収もあるようですから、安いものでしょう」



ドアをノックする音がして入るように声をかけると、そこにはツムに抱っこされた煌成くんが大粒の涙を流していた。
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