センセイの好きなもの
「それではお預かりしますね」

「よろしくお願いします」



男の子はキャラクターがついた小さいリュックにミニカーを詰めると、それを持って応接室を出た。


「みち子さん、少し外に出てきますね」


「今日は暖かいから、散歩にはちょうどいいわね。お名前は?」


みち子さんはデスクからにこやかに声をかける。大学生の娘さんがいるママさんだけに、子どものお世話は本当はみち子さんのほうがいいのかな?


「こうちゃん!」


私はこうちゃんの手をそっと握った。嫌がることなく握り返してくれる。


天気もいいから外で遊ぶにはちょうどいい。
私はやりかけの仕事をデスクの引き出しにしまうと、後のことをみち子さんにお願いして外に出た。


辛い話は出来るなら、小さい子どもには聞かせたくない。
例え理解出来ない年齢の子どもでも。
それは巧先生が弁護士になったときからの方針らしいのだ。
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