センセイの好きなもの

♢いつもの光景





朝8時、私は出勤する。



今週は鍵当番。

事務所に入ると真っ先にブラインドを上げて窓を開け、空気の入れ替えをする。

5月も下旬になって暑くなる日が増えた。

夏を思わせる強い日射しと、少しずつ高くなっていく空。



次は掃除用具を取るために資料室の鍵を開けて中に入る。

すると狭いソファの上に大の字になって眠っている巧先生の姿を見つけた。

泊り込むほど仕事を抱えてるんだ…。

ネクタイはテーブルの上に放り投げてあるし、ワイシャツには皺が寄っている。パーマヘアは寝癖で噴火したかのような爆発具合い。


起こそうかと思ったけれど前にもこんな光景を見たような気がして、慌てて手を引っ込める。


そうだ…あのときは朝からパンケーキを焼かされたんだ。
また同じ目に遭うかも知れない…。


でも私がこうして一番に出勤してきたわけで、起こさなければそれはそれで後から巧先生に怒られそうだし…。

思い切って上半身を揺さぶってみる。
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