センセイの好きなもの
「巧先生っ!」


せめてもの抵抗に大声を出したとき、ドアがガチャリと開いた。
ドサッと何かが落ちる音がする。


「助けてー!」


私はありったけの大声を出した。声に驚いたのか巧先生の体がビクッと反応する。


「ちょっとツムちゃん、大丈夫なの?」


声の主はみち子さんだった。ドタバタと駆け寄って来てくれたと思ったら、目にも止まらぬ早さで巧先生の頭にゲンコツをお見舞いする。


ゴツッ、と鈍い音がする。痛いだろうな…。
巧先生の目がパチッと開いて、腕の力が抜けて私はようやく解放される。
みち子さんは自分の後ろにサッと私を隠してくれた。



「いってーな!誰だよ!」



勢い良く飛び起きた巧先生の顔色が一変する。みち子さんの顔をのぞき込んでみると、今にもツノが生えてきそうなほど恐ろしい表情をしていた。


「やっていいことと悪いことがありますよ!ツムちゃんだって女の子なんですからね。じゃれ合いだとしても許されません。私だって娘を持つ母親ですから、然るべき対処をさせてもらいますよ」
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