センセイの好きなもの
「み、みち子さん、ちょっと待って。誤解なんだよ」


こんなときに不謹慎だけど、寝起きの巧先生の声は少しかすれていて色っぽい。



「誤解もへったくれもあるか!ツムちゃんは助けを求めてたんだから、アンタが襲おうとしたんでしょ!早く着替えて準備をしてください。早めに出てきて良かったわ。ツムちゃん、何もされてないの?正直に言いなさい」



みち子さんは心配そうに私の体をペタペタ触っている。もしみち子さんが来てくれなかったら、あのまま動けなかったのかな。


「大丈夫です。巧先生を起こそうとしたらあんなことになっちゃって…」


「ツム、これは事故だよな?俺が悪かった」


巧先生はゲンコツをされたところを触って、痛そうに顔をしかめている。


「みち子さん、ここタンコブ…」


みち子さんはすかさず巧先生を睨みつけると、首根っこを掴んでドスのきいた声で言った。


「放っておけば治る。それより早く準備しろ。私は言いましたよ。然るべき対処をすると」


「ひっ…」


巧先生はみち子さんに怯んでいた。

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