センセイの好きなもの
事務所内は気まずい空気で満ちている。
ソファに私とみち子さん、大先生と巧先生がそれぞれ並んで向き合って座っている。
吉川先生は出勤早々にみち子さんの怒り見て慌てふためいていたので、邪魔だと言われてしまい、自分のデスクから心配そうにソワソワしてこちらを見ている。
みち子さんの言った“然るべき対処”とはこういうこと。
巧先生のお父さんである大先生に状況を詳しく話したのだ。
私、こんなに大変なことになるなんて思ってなかったんだけど…。
口を挟むタイミングすらなかった。
「巧、寝ぼけてたからってツムちゃんのこと、その…襲おうとしてたって最低だよ」
「だから襲おうとしてたわけじゃないって言ってるだろ!みち子さんが勘違いしてるんだって。ただ寝ぼけて、ギューッと抱きしめちゃっただけなんだよ。ほら、ツムってペットみたいなところあるだろ」
ペットだとぉ?
確かにこの天パがトイプードル並みだと言われたことはあるけど…。
色気がないことくらい自分でも分かってるけど。けど!ペットって…。