センセイの好きなもの
大先生のその一言に、全員が巧先生に注目する。私のことが好きだなんて、そんなことはあり得ない。


私は頭も良くないし、美人でもないし、紗絵さんのように横にいて釣り合うかといったらそうじゃない。
育ちだってまったく違うし…。


巧先生はかっこいい。

初めて見たときからそう思ったけど、今はもっとそう思う。
見た目だけじゃなく中身もかっこいい。


仕事をいくつも抱えながら全部ちゃんとこなすし、徹夜して事務所に泊まってもクライアントには微塵も感じさせない。


その反面、食べることが大好きで、いつも私が作るものは全部平らげる。
無駄に声が大きいからびっくりすることもあるし、寝起きはいつも髪の毛が爆発しているし、時には強引なところもある。


でも巧先生と一緒にいる時間は好きだ。

一緒に食事をしてテレビを見て、他愛もないことを話す。
そんな時間がいつの間にか私の日常になっている。


私の内職や生い立ちを知っても誰にも言わずにいてくれている。
私を守ると言ってくれた。


だから私は巧先生のことが…―――。
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