センセイの好きなもの
「ただいまー!」
「おかえりなさい」
テレビを見ながら夕飯の準備をしていると、思っていたより早く巧先生が帰ってきた。
「はい、コレ」
巧先生は私に箱を差し出す。何かと思えば見慣れたケーキの箱だった。今日、事務所でも見たな…。
「先生、これ…」
「ツムの好きなケーキが入ってるぞ。デザートにしよう」
昼間だって、みち子さんのおこぼれで食べさせてもらったのに…。
巧先生はキッチンで手早く手を洗うと、疲れたと言ってソファに沈み込んだ。
重たそうな大きい鞄はダイニングテーブルに放りっぱなし。
ネクタイと背広は椅子の背もたれにかけたままだ。
「先生!シワになっちゃいますよ」
「あとで片付ける。ツムー、腹減った」
まるで子どものようにお腹をさすりながら言う。ケーキを買ってきてくれたし、今日は見逃してあげようか。
あとでワイシャツにアイロンをかけたら、一緒に片付けてもらおう。