センセイの好きなもの
「金髪なんて想像つかない…。パーマは前からかけてるんですか?」


「かけてるわねぇ。ここで働くようになったときはもう、今の頭だったわね」


それなら3年くらいはパーマヘアなのか。



フロアをコツコツと歩く音が聞こえたと思ったら、突然ドアがバターン!と大きな音を立てて開いた。

巧先生がまるでモデルのように格好つけて立っている。



「俺の話をしてるヤツは誰だ?!」



…何だかどこかが違う気がする。


スーツは変わってない。ネクタイも靴も同じ。


「あーっ!」



私とみち子さんは同時に声を上げた。

巧先生のパーマはいつもふわっとしていたのに、どういうわけかクルクルに近くなっている。まるで私の頭を見ているみたい…。



「どうよ?パーマかけ直してきたんだけどさ」


「仕事がないからって、抜け出して美容院?巧先生が継いだら潰れるわ~」


みち子さんは呆れたように言うと、大きなため息をついた。
戻ってこないと思ってたけど、下の美容院に居たのか…。
< 170 / 234 >

この作品をシェア

pagetop