センセイの好きなもの



巧先生は宣言通り18時に上がった。

先生たちは大体いつも残って仕事をしているので、定時で上がるなんて滅多にない。
しかもみんな仕事が片づいていたらしく、大先生も吉川先生も一緒に上がった。


私は巧先生に先に帰れと言われていたので、そのまま真っ直ぐ帰ってきた。


だけど巧先生、本当に料理なんて出来るのかな…?料理してるところなんて見たことない。
家には調味料が一通りあって、調理器具も食器もそれなりに揃っていた。

包丁なんて私の家にあるものより断然良いものだったけど…。

どんなものを作ってくれるんだろう。





黙々と手を動かしていると、時間が経つのも忘れてしまう。
ふとテレビに目をやるといつの間にかニュースが終わっていて、バラエティ番組が流れていた。


巧先生遅いな…。



「ツムー!」


外から巧先生の大声がして、同時にピンポンとチャイムが鳴る。

ボールペンの部品に埃がつかないように素早く立ち上がると、玄関に行って鍵とドアを開けた。
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