センセイの好きなもの
巧先生は何を買ったのか、部屋に入ると持っていた大きなビニール袋を2つドサッと下ろす。

私は巧先生の鞄を受取った。初めて持ったけど、大先生の物と同じでずっしり重い。



「そんなに何を買ったんですか…」


「だってお前んちの冷蔵庫、いつも空っぽだろ。ストックだよ」


空っぽだなんて人聞きの悪い…。
冷蔵庫は2ドアの小さいものだし、家でしっかり食べるのは夜くらいだし、普段は一人だから食材もそんなに使わないんだけど。



「そういや飲み屋のオバちゃんに声かけられちゃった」


巧先生はエプロン借りるぞと言って、私のレモンイエローのエプロンをつける。

やば…似合ってる。

ワイシャツと緩くなったネクタイとエプロン。ちょっと可愛い。



「客引きですか」


「ちげーよ。まあ多分スナックとかのオバちゃんだと思うけど。40代くらいかな、綺麗なのにケバかった。ディスカウントショップの場所聞かれてさ」


ビニール袋から次々と食材を取り出してキッチンの小さなテーブルに置くと、あっという間に隙間なく埋め尽くされてしまった。
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