センセイの好きなもの
家事も一通りやる。料理も嫌いじゃない。親父と二人になってからは分担してたし。でもメシはやっぱりさ、作ってほしいんだよな」



そうか…。両親の離婚があって大先生と二人になって、きっと苦労したんだろうな。
私が賄いを作っているのもあるけど、巧先生がコンビニで食べ物を買ってきたのを見たことがない。
商店街のパン屋さんとか、おにぎり屋さんとかならあるけど。



「それなのにツムにはずっと断られるし」


巧先生は恨めしそうに私を見てくる。
確かに週2回って約束で夕飯を作ってたけど…。私にも事情ってものがあるわけで。



「ちゃんと言ったじゃないですか。納期が短いから時間がないって。大先生と食事したらいいのに」


「ブッ!」


巧先生はコンソメスープを飲み込み損ねて吹き出してしまった。
仲いいし親子水入らずっていいと思うけどな。

私と母だったら絶対嫌だけど。



「バカなこと言うなよ…結婚してて家庭があるなら親父とメシもアリだと思うけどな、まだ独身だぞ?何が悲しくて親父と二人で…」
< 176 / 234 >

この作品をシェア

pagetop