センセイの好きなもの
一瞬の気まずい空気のあと、大先生は巧先生の頭を思い切り小突いた。


「いてっ!」


「仕事では多少強引でもいいと思うよ。それくらいでちょうど良いときもある。だけどな、女の子には紳士的にちゃんとしろ。お前だっていい大人なんだから、大事なことはちゃんと言え」



巧先生は少しふてくされたような表情だ。
今まで考えたこともなかったけど、こうして見るとやっぱり親子なんだなぁ。私の前ではいつだって先生だけど、巧先生も大先生の前では子どもなんだ。

なぜだか分からないけど、羨ましい。



「ツムちゃんは巧のこと好きなの?」


「はい」


何も考えずに条件反射で即答してしまった。

大先生は、そうかそうかと笑っている。

私なんかが巧先生の相手でもいいのかな…。



「本人同士が好きならそれが一番だよ。ところでお前のそのクルクル頭はツムちゃんと同じにしたの?」


…やっぱり私の頭ってクルクルなの?
23年間ずっと、ふわふわだと思ってきたのに。

巧先生はムスッとして答えた。

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