センセイの好きなもの
「まだボールペン作ってんの?」
巧先生は部屋に入ると、山積みのダンボール箱を開けようとした。
「もう納品しました。今度は造花です」
造花作りも結構疲れる。疲れない仕事なんてないんだけどね。
巧先生はおもむろに材料をテーブルに広げる。
「よーし、作るか。コレなら俺にも…」
「ちょっと先生!うちに何しに来たんですか。家まで送りますから」
「酒が抜けるまで居るよ」
お酒ってどれくらい経ったら抜けるの?
私なんてこの前を朝になっても頭がズキズキしてお酒臭くて…。
「ツム、ドーナツ食いたい」
「は?」
「作ってよ。やっぱり酒飲んだあとは甘いもんだろ」
やっぱりってどういうことよ?甘いものが食べたいならコンビニでも寄れば良かったのに。
それにドーナツの材料なんてないし…。
「先生、ドーナツの材料なんて…」
「粉は戸棚にある。この前買っといたから」
急いで戸棚を開けると、簡単にドーナツが作れるミックス粉が入っていた。
巧先生はニコニコして期待に膨らんだ視線を向けてくる。
…この人には敵わない。