センセイの好きなもの



「まだボールペン作ってんの?」


巧先生は部屋に入ると、山積みのダンボール箱を開けようとした。


「もう納品しました。今度は造花です」


造花作りも結構疲れる。疲れない仕事なんてないんだけどね。
巧先生はおもむろに材料をテーブルに広げる。



「よーし、作るか。コレなら俺にも…」


「ちょっと先生!うちに何しに来たんですか。家まで送りますから」


「酒が抜けるまで居るよ」


お酒ってどれくらい経ったら抜けるの?
私なんてこの前を朝になっても頭がズキズキしてお酒臭くて…。


「ツム、ドーナツ食いたい」


「は?」


「作ってよ。やっぱり酒飲んだあとは甘いもんだろ」


やっぱりってどういうことよ?甘いものが食べたいならコンビニでも寄れば良かったのに。
それにドーナツの材料なんてないし…。


「先生、ドーナツの材料なんて…」


「粉は戸棚にある。この前買っといたから」


急いで戸棚を開けると、簡単にドーナツが作れるミックス粉が入っていた。
巧先生はニコニコして期待に膨らんだ視線を向けてくる。
…この人には敵わない。

< 186 / 234 >

この作品をシェア

pagetop