センセイの好きなもの
「ツムちゃん、迷惑をかけるなんてことは一つもないのよ。たとえここにツムちゃんのお母さんがやって来たとしても、それは先生たちに任せればいいこと。私もそうだけど、みんながツムちゃんを守るんだから。吉川くんはまだ劣るけど」


「みち子さん、俺だってクライアント持ってるんですよ。その言い方はないっしょ」



吉川先生はふてくされてソファにどさっと寄りかかった。

確かに大先生と巧先生に比べるとちょっと劣る。ちょっとね。




「ツムちゃんは自由に生きたらいいんだから。普通の20代の女の子らしく、オシャレしたり遊びに行ったり、恋をしたり。ちゃんと胸を張って生きること。ツムちゃんも巧も吉川くんも、前だけを見て生きて行ける年代だよ。僕やみち子さんくらいになると、ほら。時には過去を振り返ったりして人生の整理をしなくちゃいけないから」


「私は功先生よりずーっと若いですよ。末娘は大学生だし、まだまだ私も前を向いて生きて行かないと!」


みち子さんは胸をドン!と叩く。どんな年代だって前向きに生きて行かないといけないんだろう。
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