センセイの好きなもの
それが一番難しいことなんだけど。



「みち子さん、僕とちょっとしか変わらないじゃないの」


「功先生、私の歳のことは言わないでください!」



みんな笑ってる。私もそれにつられて笑ってしまう。
こういう明るい職場だから好きなんだ。



「だから言っただろ、大丈夫だって」


巧先生は笑顔でそう言うと、私の頭をポンと叩いた。

信じてなかったわけじゃない。いつも私の中の臆病な気持ちに勝てなかった。
だけど、巧先生がいてくれたから―――。



「ところで巧、ツムちゃんにちゃんと言ったの?」


大先生は熱いお茶をすすりながら言った。

…言ったって何を?



「親父、ここで言うなよ」


「何を隠してるんすか」


吉川先生は巧先生の脇腹を突っついて、本気で頭を叩かれていた。


「またツムちゃんにやましいことしたんじゃないでしょうね?」


「何もしてないって!親父も余計なこと言うなよ」


「お前は肝心なところでヘタレなんだよなぁ…。ツムちゃんに嫌われるぞ」



そうか。私まだ付き合おうって言われてない。
でも今はいいんだ。今度言ってもらうから。
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