センセイの好きなもの



食事を終えて外に出ると、雨はより一層激しさを増していた。

大先生は吉川先生を送って行くらしく、事務所近くの駐車場で別れた。

私は巧先生が送ってくれると言うので、自転車は駐輪場にそのまま置いていくことにした。

歩いて来れない距離じゃないし鍵当番でもないから、早めに出れば間に合うだろう。




「ツム、明日の朝迎えに行くから」


「えっ、いいですよ。歩いて来ます」


「迎えに行くって言ってんの。8時過ぎに外で待ってろ」



断っても聞き入れてくれなさそう。このままじゃ押し問答だし、車なら楽だし…甘えようかなぁ。


「じゃあ…お願いします」


「おう」



叩きつけるような雨音が車内に響く。
ワイパーをかけてもキリがない。バックミラーもサイドミラーも役に立たないくらいだ。

けれどその中に、傘が吹き飛ばされそうになっている女性の姿が見えた。顔は分からないけれど、ロングドレスなのか脚に張りついている。



「この雨じゃ傘なんて役に立たないよな」


巧先生も気づいたようだ。
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