センセイの好きなもの
♢母の過去
私の息が落ちついた頃、巧先生からお呼びがかかった。
大先生は私の肩をポンポンと叩いて「巧に任せておけば大丈夫だから」と言って出て行ってしまった。
「ツム、ここでちゃんと話し合おう。今やらなきゃ、もうチャンスはないだろ?」
「はい。でも巧先生、午後からアポが入ってたはずじゃ…」
「大丈夫。万が一間に合わないときは親父がいる」
たくさん仕事を抱えているのに…。私のことで時間を取らせるなんて申し訳ない。こんなこと巧先生に言ったら怒られるから口には出さないけれど。
「三上さん、正直に答えてください。今回、ツム―――娘さんに会いに来たのはどうしてですか?」
「娘に会いに来るのに理由が必要なんですか?紡実は私の娘なんですよ。たった一人の」
巧先生は表情一つ崩さない、ポーカーフェイスだ。私の知らない表情。きっとこれが仕事のときの顔。
「何が目的ですか?」
「目的?私は紡実に会いに来ただけですよ」
母はにこやかに微笑んでいる。何を考えているのかまったく読めないから怖いんだ。
大先生は私の肩をポンポンと叩いて「巧に任せておけば大丈夫だから」と言って出て行ってしまった。
「ツム、ここでちゃんと話し合おう。今やらなきゃ、もうチャンスはないだろ?」
「はい。でも巧先生、午後からアポが入ってたはずじゃ…」
「大丈夫。万が一間に合わないときは親父がいる」
たくさん仕事を抱えているのに…。私のことで時間を取らせるなんて申し訳ない。こんなこと巧先生に言ったら怒られるから口には出さないけれど。
「三上さん、正直に答えてください。今回、ツム―――娘さんに会いに来たのはどうしてですか?」
「娘に会いに来るのに理由が必要なんですか?紡実は私の娘なんですよ。たった一人の」
巧先生は表情一つ崩さない、ポーカーフェイスだ。私の知らない表情。きっとこれが仕事のときの顔。
「何が目的ですか?」
「目的?私は紡実に会いに来ただけですよ」
母はにこやかに微笑んでいる。何を考えているのかまったく読めないから怖いんだ。