センセイの好きなもの
もし母と一緒に暮らしていたら、どんな生活をしていたんだろう。あの頃、再婚という言葉で母が私より男を取ったと分かった。

その前だってホステスという言葉は知らなくても、何となくそういう仕事をしているんだろうと気づいていた。

だからきっと母と暮らしていたら、愛人として生きる母を嫌悪したかも知れない。



「相手の方とは、その後は?」


「半年して別れました。彼は私に自分の子どもを産んでほしいと…そう言ったんです。しかも男の子を。奥様は娘二人を産んでいるから期待できない、だから私に後継ぎを産んでくれと。そのためだけに私は丸め込まれていただけだったんです」


「子どもを産んだの…?」



私の問いかけに、母は唇を噛みしめて黙り込んでしまった。

あのときの母は若かったし、何があっても不思議じゃない。



「……産んでないわ。私にとって子どもは紡実だけだもの。産めないと言ったら、何のためにいい生活をさせてやってるんだと殴られた。すぐに追い出されて、お金もなくて…。
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