センセイの好きなもの
巧先生はベッドに寄りかかるように座りながら、大きなビニール袋の中から次々と容器を取り出して並べていく。

テレビの目の前のこの席、すっかり巧先生の場所だなぁ…。



「俺はスゲー腹減ってさ。仕事も残ってたのに親父に付き合わされるし。ほらコレ、親父から。フカヒレあんかけ丼、エビチリと酢豚と春巻き、から揚げと五目炒め。あとゴマ団子な」



あっという間にテーブルの上が料理で埋め尽くされていた。


「ここの中華、美味いんだよ。食おうぜ」



きっと巧先生は自分がお腹が空いていたからだと言うだろうけど、私を気にかけてくれるこの優しさが嬉しい。

だから素直に言う。



「巧先生、ありがとう」


「お礼は親父に言えよ。親父、心配してた。明日からも仕事に来てくれるだろうか、って」


大先生にそんな心配をかけてしまったんだ…。



「それなら私のほうが心配なんですけど…。あんなご迷惑をかけて、巧先生には母のお金のことでも解決してもらうことになってしまって」


「報酬はツムから貰うことにする」
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