センセイの好きなもの
私はずっと人と関わらずに来たけれど、それを巧先生が変えてくれた。


ふと巧先生に目をやると、幸せそうにフカヒレあんかけ丼を頬張っている。



「そういえばツムはこれから母親とどうする?」


「どうするって?」


「あの人はまたツムに会いたいって言ってた。普通の親子みたく過ごしたいって」



離れていた15年、私も母もまったく違う人生を歩んできた。

母が私を置いて行ったことを恨んでいるわけじゃないし、憎んでもいない。

許せなかったのは再会してからのことだ。
私はいくつも仕事を辞めたし、いつ母に見つかるか怯えながら暮らしていた。



「今すぐどうこうとは言えません。この先、私の生活を壊さないかと言ったら、その信用はどこにもないし…。私はただ普通に暮らしたいから、そこに母が入ってくるのは怖い…。巧先生、母にお金出したりしないですよね?」



お金が必要なら用立てると昼間言っていたけど、そんなことは絶対あってはならないこと。
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