センセイの好きなもの
「ツームー!新しい歯磨き粉ない?」


「洗面台の下の戸棚です」



私たちは一緒に暮らしているわけじゃなくて、週末には時々どちらかの家に泊まっている。



「あった!」



私はなぜだかいつの間にかこの家に必要なものの買い出しまで任されてしまい、巧先生自身もどこに何があるのか把握していないことがあるらしい。



今日は7月12日。

巧先生のお母様の命日は15日だけれど、その日は平日で仕事もあるからお墓参りには行けない。
だから日曜日である今日、行くことになった。私は去年も連れて行ってもらったけれど、今年はなぜだか母にも来てもらいたいと巧先生に言われた。


母は今、地元で居酒屋をやっている。

駅前だからなのかお客さんも増えているらしく
、アルバイトの人を二人雇ったらしい。


私は相変わらずあのアパートに住んでいて、内職も続けているし、事務所でも働かせてもらっている。
巧先生は同居しないかと言ってくれた。そのほうがお金を貯められるんじゃないか、と。

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