センセイの好きなもの
母も同じ丈の白い細身のパンツ、水色に白い水玉模様のチュニック。

形やデザインはもちろん違うし、どこにだってありふれているような服装だ。



「これね、紡実が母の日にプレゼントしてくれたのよ。私はどこかケバい服ばっかりだったから。さすがにもうドレスは着ないし捨てたんだけど、ちゃんと年相応のものを着てくれって怒られて。だから最近は雑誌を見たりして服を買ってるのよ」


「お母さん、それ似合ってる。ツムもいいとこあるじゃん」



巧先生は私の頭をわしゃわしゃと撫で回す。
いつものことだけど、一気にぐしゃぐしゃだ。


母は赤い口紅もやめたらしく、今はベージュやピンク系を使っているらしい。
髪も緩くパーマをかけていて、今日は一つにまとめている。



「さて、どこだっけな。俺、いつも迷うんだよ」



庭園を抜けると広大な敷地はブロック毎に分けられていて、それだけの人がここで眠っていることを思い知らされる。

今は生前に買う人もいるらしいから、一概には言えないけれど。
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