センセイの好きなもの
「あら、ツムちゃん。わざわざ持ってきてくれたの?助かるわ。ありがとう」


「おつかいもあったので。美味しかったです」


この前お店のご主人は大先生の幼なじみで、30年前に脱サラして始めたという。
ご夫婦と奥さんの妹さんの3人で切り盛りしていたものの、一昨年妹さんが体調を崩したことをきっかけに娘さんが手伝い始めたという。

香さんには小学生と幼稚園の子どもがいる。



「そうそう、丼取りに行くときに渡してくれって言われたものがあってね~。今、母さんもおばちゃんも出前行っちゃってるんだけど―――ちょっと待ってて」


香さんはそう言いながら厨房に入っていく。私はカウンター席に腰をかけた。

ここは打ち立ての生蕎麦のテイクアウトもあって、夕時には行列になることもある。
私はここの茶そばが好き。仕事帰りに買って帰ろうかな。
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