センセイの好きなもの
すっかり冷め切ってしまったスープを一気に流し込む。
巧先生は私の目の前にドカッと腰を下ろした。


「お前、ちゃんと寝てるのかよ?食事もせずにボーッとして」


「寝てますよ。それは大丈夫です」


仕事がある日でも内職は5~6時間やる。
だけど休みの日のほうがゆっくりする時間がない。食事も忘れて内職をしているときがほとんど。


視線を感じると思ったら、巧先生が睨みつけるように恐い顔で私をジッと見ている。


「オムライスならあげませんよ!」


「いらねーよ!腹いっぱい食ったし。そうじゃなくて、ずっと話そうと思ってたけど内職って金になんの?」


「……それは、どのくらいさばけるかによります。単価が安くても高くても数をこなせないとお金にならないので」


稼ぐ人はパートで働くくらい稼げるらしいけど、それは本当にベテランで内職を専業にしている人の話。私はここの仕事もあるし、そんなにはこなせないから微微たるもの。
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