センセイの好きなもの

「知らない知らない。でも呼び方からすると、昔の友人？または元彼女とか？」


元彼女…。


巧先生は何かを決めたようにデスクをバン！と叩きつけると立ち上がって、緩んでいたネクタイを締め直す。
これでもかというくらいギュウギュウと。
苦しくないのかな…。


「高村実さん―――こちらで弁護してらっしゃる高村陽子さんのご主人の弁護を担当します、玉井です。まさか巧と仕事で会うことになるとはね」


「これはこれはアポもなく、急にいらっしゃってビックリしましたよ。丸山巧です。ここは一つフェアによろしくお願いします」


まるで二人の間からバチバチ聞こえてきそうなくらい、火花が散りそうな勢いだ。
玉井先生はヒールを履いているのはさておき、身長が高いらしい。
さほど見上げることもなく、巧先生に話しかけている。

「今日これから時間はありますか？高村さんのことで早急に話したいことがあります」