センセイの好きなもの
それから1時間ほどして先生たちが出てきた。
巧先生はムスッとしていて、明らかに何かしらあったと分かる。


「功先生、今日は急にお邪魔しまして申し訳ありませんでした。連絡したら巧に逃げられそうで」


「いやいや、うちは忙しくないから気にしないで」


逃げられそうって、何があったんだろう。

私からしたらものすごく忙しい日はないけど、先生たちからしたらいつだって忙しいはずだ。

同じ弁護士で、しかも大手の事務所にいるなら、まずアポを取ることくらい分かるだろうに。


「ツムー、コーヒー淹れてくれ。すっげえ濃いやつ!」


「コーヒーくらい自分でやりなさいよ。サーバーがあるんだから簡単でしょ」


コーヒーを淹れることも私の仕事…。

巧先生からファイルを受け取ると棚に戻して、私はマグカップを取りに給湯室に入る。

玉井先生の性格は苦手だ。
< 74 / 234 >

この作品をシェア

pagetop