センセイの好きなもの
離婚相談は途切れることなくやってくる。
調停や裁判にしなくとも俺たちが間に入ることで円満に別れる夫婦もいるし、もちろんそれでは済まないことも沢山ある。


理由も人それぞれ。
正当な理由から、そんなことで別れるのかと耳を疑うようなこともいくらでもある。

だけどクライアントが子どもを連れて事務所に来た場合、前事務所でもそうだったけれど、内容を聞かせたくないから手の空いているスタッフに見てもらっていた。

子ども自身がある程度大きくて、同席することを望んだ場合を除いて。

親がどんな別れ方をしようとも、一番傷つくのはそれに振り回される子どもだ。それは俺が一番よく分かってる。


親父は母の気持ちを尊重して別れた。
俺は自分で親父と一緒にいることを決めた。あのとき母について行くと言ったら、親父はきっとそれを認めてくれたと思う。

自分で決めたことだから後悔なんてしてない。

多くの子どもたちが自分の気持ちを言えるように、親がそれを理解してくれるように。

それを願いながら仕事をしていくだけだ。
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