極道一家のマヤ


「…」


美都場は何も言わない。


「ちっ…」


怒りをぶつけるように種を翻し…裏腹に優しい手つきで眠る桜の体を抱き上げた。


そして私には目もくれず、スタスタと屋上を出て行く。







「…二度と俺たちに関わるな、社 真弥」


不意にすぐそこで聞こえた低い声に、私は顔を上げた。


同時にごみクズでも見るかのような冷たい視線が…こちらへと向けらている。


完全に彼らから嫌われてしまった…





「言われなくても…そのつもり」



絞り出すように言ったその言葉が、春野にちゃんととどいたのかはわからない。


春野は何も言わず…桜を抱きかかえた美都場に続くようにして、屋上を出て行った。









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