極道一家のマヤ
「ねえ、ちょっと聞きたいんだけど」
―昼下がり。
窓の外を呆然と眺めていた私の席にそっと影が差す。
「…」
机に突いていた肘から顔を離し、ゆっくりと顔を上げると…
「杏奈…」
お弁当を片手にした杏奈が立っていた。
「昼ごはん食べないの?」と言いながら空いている隣の席へと座る彼女。
もうお昼の時間だったんだ…
ぼーっとしてたから、そんなことさえにも気づかなかった。
「おもしろいこと小耳に挟んだんだよねー」
…おもしろいこと?
突然、杏奈が口を開く。
「なんかどこぞの誰かが、屋上で『嵐』の美都場くんと春野くんを怒らせたって」
「…。」
私はすぐ隣の杏奈へと視線を上げる。
不敵な笑みを浮かべた顔がそこにはあった。
どうやら…全部筒抜けみたい。