極道一家のマヤ
私がかろうじて発狂しないで済んでいるのは、この怒りの矛先が自分ではないからだ。
「オレは…この女を気に入っている」
―ガタ…
「…っ」
一条龍が席から立ち上がる。そして…
先ほどよりも更に強く、私の腕を引っ張った。
「きゃ…っ」
体が、わずかにだが一条龍へと偏る。
それを見た美都場の顔つきが…明らかに変わった。
さっきまでの、自分に向けていた優しい表情とはまるで違う。
「…さっき言ったのが聞こえなかったのかよ、龍。お前にも…だれにもこいつはわたさねえ」
こ、
これは…
もしや人生初の、モテ期というやつでしょうか…?
…って、地味に感動してる場合じゃないっつの!!