極道一家のマヤ
神名が抱き着いてきた時点で、男子からは驚いたような視線を、女子からは睨むような視線が注がれている。
そういえば、このクラスの大半の女子が『嵐』のファンだった……。
「えー!マヤりん冷たい……」
マヤりんって……
いくらなんでも以前までと態度変わり過ぎだと思うんですけど。
そんな私の考えを汲み取ったように、次の瞬間にはニコッと満面の笑みを浮かべる神名。
「嵐が認めた女の子はあ、もはやオレの彼女同然なんだよ」
勝手に付き合ってることにしないでください。
「マヤちゃん……」
不意に、神名以外の人に名前を呼ばれる。
顔を上げると、哀しげにこちらを見る春野がいた。
「屋上での桜の件……勝手に犯人だって決めつけてごめんな」
「ああ……」
そういえば桜はあの日以来、気を失って入院してたんだよね……。
今思い出しても、桜をそんな目に遭わせたあの女たちには腹が立つ。
だけど別に、あのときの美都場と春野は悪くないと思う。