極道一家のマヤ



自分に部屋に戻ってきたのと、突如携帯が鳴り出したのはほぼ同時だった。


「……っ」


心臓が鷲掴みされたように痛く、そして大きく揺れる。


携帯の画面に表示されている、着信の相手の名前は……


【美都場 嵐】-・・。





心配して、かけてきてくれたのだろうか……?


今日の放課後のこと、杏奈からは聞いてる?


どちらにせよ、黙って今日はいなくなったわけだから、こうして電話をかけてきてくれているのかも……


携帯から視線を外し、しかしと思い直す。


もし電話に出てしまったら……


自分が今社家にいること、そしてなぜ社家にいるのかを話さなくてはいけなくなるかもしれない。


美都場に迷惑をかけることになる……


だけど……





震える指先を、ゆっくりと携帯に伸ばす。





< 541 / 581 >

この作品をシェア

pagetop