恋よりもっと。~トモダチ以上カレシ未満~
マジョリティマイノリティ
越谷さんが連れてきてくれたのは、静かなバーだった。
会社からは距離があり、たぶん社内の人間に合う確立はほぼない。
ジャズの流れる薄暗い店内は、越谷さんの雰囲気と合う。
きっといつもはカウンターに座るのだろう。
バーテンダーに一言かけ、越谷さんは奥の二人掛けの席に私を誘った。
「好きなもの頼んで。上杉はお酒平気だったよね。ここのカクテルは美味しいよ」
「はい」
私はまだ固い表情を崩せずにいる。
越谷さんに寛との軋轢を見られた。
一体、何の話をされるのだろう。
私の顔を見て、越谷さんが優しげな面差しをさらに柔らかくした。
「何も上杉を捕って食おうってわけじゃないからさ。そんな顔しないでよ」