恋よりもっと。~トモダチ以上カレシ未満~
「入る?」


私は念のため聞いた。
約束していないとはいえ、寛を待たせていたわけだし。
部屋くらい通すべきなんだろう。


「いい。おまえ、入ってほしくなさそうだもん」


寛が苦笑いした。

それから、私に近付く。
腕をつかみ、ぐるんと私を反転させると、ドアと自分で挟む格好にする。

ドアに背を押し付けられ、キスをした。
私はキスに抗わなかった。


「身体くらいじゃ、全然俺のもんになんないな」


唇を離して、寛がポツリと言った。


「こんなに厳しい相手だとは、友達やってた時はわかんなかった」


友達やってたから、厳しくなるんだよ。

私は心の中で呟いた。


「また、連絡する」


寛は困った顔で笑い、私に背を向けた。
エレベーターに向かう背中を、追いかけたい気もした。
目をそらしたい気もした。




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