恋よりもっと。~トモダチ以上カレシ未満~
「そう。反省会って言ってね」


「あの頃の一課の課長、サイアクだったもんな。俺、毎日コテンパンに怒鳴られまくってた」


「私もしょっちゅう『女のクセに』って言われてたな。新人の頃ってこんなもんだって思ってたけど、アレって立派なセクハラだよね」


「ああ、あとパワハラな。つーか、琴は米村さんについてたのがキツそうだったけど」


「キツイなんてもんじゃなかったよ」


私は苦笑いする。
米村という先輩は女性営業職で、とにかく厳しい先輩だった。男社会で負けないよう気張っていたのかもしれないけれど、同性で直の後輩である私には半端ない当たりの強さだった。
彼女が移動になるまでの二年半、私はいつだって暗い顔をしていたように思う。


「ほぼ毎日、ここに来てたね」


「そうだな。二人で何も喋らんなくなった日もあったよな。凹み過ぎて」


「口開くと泣けてきてね。何にも言えなかったね」


いつの間にかここに来なくても平気になっていた。
その代わり、私たちは二人であの赤提灯に飲みに行くようになった。

失敗もパワハラも、お酒で笑い飛ばせるようになった私たちは、少しずつ大人になっていったのかもしれない。
< 155 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop