恋よりもっと。~トモダチ以上カレシ未満~
私は寛のグラスを持つ手に自分の手を重ねた。


「寛、聞いて」


酔っている寛に全部の気持ちが届くとは思えない。
だからこそ、今なら少しだけ本音が出せる。


「私は、あんたが一番大事。寛の幸せが一番大事。だって、親友だもん」


「琴……」


「だから、あんたの傷ついた心が元気になるまで、私が守るよ」


これが真に友情なのかと問われれば、危うい気もした。
寛を大切に思う気持ちの重さは、私自身にも説明がつかない。

ただ、恋で片付けてしまうには、あまりに私たちの友情の密度は濃すぎたのだと思う。


「私も飲もうかな」


私はおじちゃんに生ビールをお願いした。




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