恋よりもっと。~トモダチ以上カレシ未満~
あの瞬間、衝動的だとしても、私は寛が欲しかった。
安田の代わりでも、寛に抱かれたかった。
そして、それは叶ったのだ。

最悪の後悔とともに。



「悪い、遅くなった」


寛が現れた。
見上げた私は、ひどい顔をしていただろう。

後悔と、それに伴う嫌悪。
自己嫌悪でありながら、寛まで憎く感じてしまう。


寛は私の複雑な表情に、言葉は付け加えなかった。
どんな表情も選べないのは寛も同じだろう。


「お疲れ様。待ってないから気にしないで」


「おじちゃん、いつもの」


寛はカウンターのおじちゃんに声をかけ、あらためて私に向き直った。


私はその時まで、寛が何か話があるとは思わなかった。

せいぜい、私との友情を保つために、いつものお店に誘ってくれたんだろう、くらいにしか思わなかった。
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