恋よりもっと。~トモダチ以上カレシ未満~
嘲笑めいた吐息が聞こえた。
寛が笑ったのだ。


「本当の話をすれば、うちの親は納得するよ。浮気に嘘まで重ねる嫁は欲しくないだろ」


寛にしては、最高級に辛らつな言葉だった。


私は、自分が立ち聞きした話が、立ち入ってはいけないものだったと改めて思った。
口出ししないでよかった。

寛はきちんと自分で正解を選べたじゃないか。
過保護な母親ぶらないで本当によかった。


ふと、安田が泣き声を止めた。

ぴたりと、
音がするくらい。


ドア越しにも不穏な空気が伝わる。



「そんなこと言ってさ。私を捨てておいて……上杉先輩と付き合うんでしょ?」


「は?」


寛の問い返しに合わせて、私も声を出しそうになった。
なぜ、私が出てくる?


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