恋よりもっと。~トモダチ以上カレシ未満~
今度は寛が押し黙る。


否定すればいい。
さっさと否定すればいい。


だけど、寛の頭にはあの夜が過ぎっているはずだ。

安田が今責めている気持ちの面とは別次元で、私たちはすでに身体の関係を持ってしまった。



バカ正直な寛はそれを口にしかねない。

今それを口にすることが、どれだけ彼を不利にするか……。



安田は寛の沈黙の正体を知らず、続ける。



「私、上杉琴って大嫌い!サバサバいい女気取って、いっつも『仕事してます』的な顔してさ。私ら事務職とは世界が違う感出しまくっちゃってて。
私のこと可愛がってくれてたけど、優越感が見え見えだった!仕事も、寛ちゃんとの関係も、私が上よみたいな顔してて……」



私は思い切ってミーティングルームのドアを開けた。


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