ただ、君の隣にいたいだけ
「・・・花菜ちゃんが嫌じゃなければ」



「な、なんで私が嫌なんですか?そんなわけないですよ。デート、行きましょう。また歌舞伎ですか?」



「・・・今日は歌舞伎じゃない」




用意出来るまで待ってるから。そういい残し、亮輔さんは部屋に入って行った。パチクリと何度も瞬きを繰り返し、ようやく言葉の意味を理解した。



歌舞伎じゃないデート。それってもしかして本物のデート??いや、でもそんなわけないよね。大体、亮輔さんが私を普通のデートに誘うはずがない。



デートって言えば行くと思ってるからそう言うだけ。そうだよね。なのになんで私、クローゼットを全開にして洋服を選んでるの?どうせ、殺陣の教室とかナイトレンジャー系の何かだよ。



分かっているよ。期待なんてしたって無駄だって。亮輔さんの特別になんてなれないことくらい。


でも、綾羽さんを見て悔しかった。
お似合い過ぎて泣きたくなった。



あまり待たせるわけにはいかない。でも、手を抜きたくない。デートの言葉に便乗するように自分に魔法を掛ける。



いつもは下ろしっぱなしの髪の毛を高い位置でポニーテールにしてみたり、白のロングスカート、トップスは襟が可愛いグレーのボーダーにした。



よしっ、可愛い。魔法が掛かったんだよ私。自信持ちなさい。
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