ただ、君の隣にいたいだけ
act 7 俺のことだけ考えてろよ
「あれ?花菜ちゃん、体調大丈夫なの?」


事務所に入り、深呼吸をして勇気を出して入って行った地下の練習場。ギリギリ練習時間までには間に合った。


私の姿を見て駆け寄ってきてくれたのは愛梨さん。顔色をジッとみて心配そうに声を掛けてくれた。



体調?ああ、そうか。亮輔さんが気を遣ってみんなにはそう言ってくれたんだ。


そんな気遣いも嬉しいけれどやっぱり切ない。なるべく亮輔さんの顔を見ないようにして愛梨さんには大丈夫ですと笑顔を見せ、着替えてきますねとトイレにTシャツを持って駆け込んだ。



入る前にあんなに勇気を出したのに入った瞬間、やっぱり泣きたくなった。ファミリーパークの受付のお姉さんに模範解答をもらったのにそれを実践できない私は落ちこぼれ。


こんな気持ちで練習なんてしたら集中できないなんて目に見えている。でも、練習に参加しないなんてそんなことしたくない。


頬を両手で二回打ち、自分に気合を入れる。できる、私はできるからと心の中で自分に魔法をかけて。



「あっ、ノッポくん・・・」



あまりここに篭ってばかりもいられないとトイレから出て行くと廊下で一人蹲るノッポくんの姿があった。


体調でも悪いのかと駆け寄って同じようにしゃがみ込むと彼は涙を流していた。



「ノ、ノッポくん?!ど、どうしたの?」



「・・・ふ、振られたんだ。彼女に」



涙を拭ってか細く呟いたノッポくん。同じ境遇のノッポくんに感情移入した私は気がつくとノッポくんの頭にそっと自分の手を置いていた。


辛いの、分かるからと彼に伝えて。
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